日本時間の2017年9月26日、Appleから macOS の最新バージョンである High Sierra が正式リリースされました。
High Sierra では、これまで長らく採用していたファイルシステム HFS+ を刷新し、Apple File System (APFS) が新たに導入されます。HFS+ の導入から数えると、約20年ぶりの更新となります。
ファイルシステム更新のニュースは、新たに発表された iPhone X(アイフォーン テン) の陰に隠れやや地味な印象ですが、実は、システムの基盤となる技術なのでとても重要なトピックです。
そこで、今回はあまり表立って取り上げられないアップルの最新ファイルシムテムに焦点を当てて、その特徴について簡単におさらいしてみたいと思います。
ファイルシステムとは
今回、新たに登場する Apple File System とは、コンピューターのファイルシステムのことです。
ファイルシステムとは、一言でいえばファイルを管理する仕組みです。
OS(オペレーティングシステム) の重要な機能の一つで、ファイルの読み出し、書き込み、作成、削除などデータ管理を任されている部分です。
身近な例で説明します。
一つひとつのファイル(データ)を音楽CD や映画のDVD に例えるなら、ファイルシムテムはそれらを収納する棚のような存在です。また、それらを管理するルールも含んだ全体の仕組みそのものです。
雑然としていて、適当に棚に詰め込まれたCDやDVDでは、いざという時、お目当てのアーティストや作品を探し出せません。
そこで、管理方法として、アーティスト名がアルファベット順であったり、ジャンルごとに並べられていれば、効率良く管理できるのは誰でも知っていることですし、皆さん、実践していると思います。
コンピューターにおけるファイル管理も全く同じで、片付けや仕分けにルールを設けて、ライブラリーを効率よく、そして使いやすくする仕組みが必要です。つまり、その仕組みがファイルシムテムという訳なんです。
導入するには SSD が必須
macOS High Sierra にアップグレードすれば、すべての Mac が新しいファイルシムテムに更新される訳ではありません。Apple が公式サイトで発表した内容は以下の通りです。
macOS High Sierra では、フラッシュストレージを搭載したすべての Mac コンピュータにおいて、Apple File System (APFS) が、デフォルトのファイルシステムになります。APFS は、強力な暗号化、スペースの共有、スナップショット、ディレクトリのサイジング機能を有し、ファイルシステムの基本機能が向上しています。
macOS High Sierra にアップグレードすると、フラッシュストレージのシステムは自動的に APFS に変換されます。ハードディスクドライブ (HDD) と Fusion drive のシステムは、APFS に変換されません。 APFS への変換を無効にするオプションはありません。
SSD(フラッシュストレージ)を搭載した Mac は強制的に新しい Apple File System (APFS) に移行するが、それ以外の HDD や フュージョンドライブの場合、既存のHFS+のままだということです。ユーザーがファイルシムテムを選択するオプションはありません。
つまり、Apple File System (APFS) に移行したければ、記憶媒体はSSDである必要があるのです。すべての Macユーザーが、その恩恵にあずかれる訳ではないんですね。
新しいファイルシムテムの特徴
フラッシュストレージに最適化されているApple File System (APFS) では以下のような機能の追加や向上が期待されています。
クローンの作成
クローンにより、オペレーティングシステムは、追加のストレージスペースを占有することなく、ファイルのコピーを作成できます。
つまり、ファイルを複製してもファイルの容量は2倍にはなりません。複製されたファイルは別のファイルではなく、オリジナルファイルのクローンなので容量を抑えることができます。
複製を作るというよりも、バージョンを管理するというイメージの方がしっくりくるかもしれません。
スナップショット
スナップショットにより、ある時点でのストレージの状態をそのまま切り取って保存できます。具体的にどのような形でユーザーが利用できるのか、現時点ではわかりませんが、簡易的なTime Machineのような使い方ができるとしたら素晴らしいですね。
Time Machine の高速化
Apple File System (APFS) へ移行した後、 Time Machine の環境設定を変更する必要はありません。そのままの状態で、フラッシュストレージに最適化されたファイルシムテムにより書き込みや読み出しの高速化が期待できます。これまでのように、バックアップ中にシステムが重くなるといった状態は無くなるかもしれません。
暗号化
もともとOS X Lion 以降のMacには、FileVault という暗号化の機能が備わっていましたが、Apple File System (APFS) の登場により、FileVault を使わずとも、ユーザーが意識することなく暗号化の恩恵にあずかれるようになります。
パーテーション
これまでドライブのパーテーションは、最初に設定した容量を後から変更できませんでした。しかし、Apple File System (APFS) では、容量が足りなくなってきた場合、後から容量を拡張することができるようです。
今後は、Bootcamp の Windows なんかで、後からストレージの容量不足に悩まされるといったケースは無くなるのかもしれません。
恩恵にあずかるにはSSD必須
リリースされたばかりで、詳細に不明な点はありますが、それらも今後色々な媒体で明らかになっていくでしょう。
とにかく、見えないところで利便性向上に貢献してくそうな Apple File System (APFS) の恩恵に預かりたいなら SSD は必須です。
現在お使いのMacのドライブがハードディスクであるなら、これを機会に SSD へ換装するか、新しいMacの購入を検討してみるのもいいかもしれませんね。